日本学術振興会 基盤研究B (平成19年度〜平成21年度) 18世紀イギリスにおける女性の言説と公共圏―文学研究と歴史研究の断層と結節点

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研 究 実 績
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 ユルゲン・ハーバーマスの『公共圏の構造的変貌』(1962年)が英訳されたのは1989年のことだった。それから20年弱の年月が過ぎた現在、文学の領域であれ、歴史学の領域であれ、近代市民社会の形成と成長という歴史的過程を論じる際には、「公共圏」は不可欠の概念となっている。
 とはいえ、必ずしもハーバーマスの理論は無条件に肯定されたわけではない。彼が描いたブルジョワ的市民社会の政治的・社会的・文化的空間には、女性の存在と活躍がすっぽりと抜け落ちており、女性史の領域からはこの重大な過失に対する批判が積み上げられ、その空隙を埋めるべく歴史の読み直しが重ねられてきた。
 本研究プロジェクトは、そうしたこれまでの公共圏をめぐる議論を踏まえながら、18世紀のイギリスにおける女性と公共圏の関係を、文学および歴史学の両方から言説を通して精査することで、両者のあり方について新たな光を照射しようとする果敢な領域横断的試みである。
 18世紀の女性にとっての「公共圏」は、男性にとっての「公共圏」と同心円を描いて共存していたわけではない。不ぞろいで、歪な形を描き、互いに交錯し、重なり合いながらも、微妙なズレを見せ、色合いを違えながら、調和と不調和、均衡と不均衡を繰り返して、共生しているのである。その二つの円が描く軌跡を文学と歴史学という二つの領域からたどり、考究することで、今まで見えなかった両者の関係が浮かび上がってこよう。
 雑誌、風刺、ポルノグラフィー、教育書、宗教文学といった多種多様な資料には、女性と公共圏の相関性を示唆する生きた言説が豊富に埋没している。それらを精読することで、カノンとして位置づけられる文学や伝統的な史料では隠蔽されてしまっている18世紀の女性の姿を掘り起こすことが可能であろう。
 テーマも多岐に及ぶ。セクシャリティ、社交、消費、政治、慈善、感受性、教育、国家と民族といった視座を設定し、そこから新たな言説研究を行うことで、18世紀イギリスにおける女性と公共圏の生態が斬新かつ生きた形で発露するはずである。
 18世紀のイギリスにおける社会的、政治的変動は、女性たちの生活と社会的立場をも変容させていく。本研究プロジェクトを通して、彼女たちの活動が構築する公共圏の位相を究明する
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